8/22から堆肥をひたすら撒いていきます。YouTubeライブで作業風景をお伝えしようかなと考えていますので17~20時に暇な方はチャンネルへお越しください🥺チャンネル
堆肥を使うと何が良いの?
「堆肥を使うと良い」とよく耳にしますが、あなたは堆肥の効果について何を思い浮かべますか?何となく作物に良さそう、収量が上がりそうなどフワッとしたことを思い浮かべる人もいれば、堆肥は土壌の生物性を豊かにし、保水性を改善し物理性が良くなると考える人もいます。今回はフワッと思い浮かぶ前者に向けた内容です。是非、「堆肥ってこんな素晴らしい効果がある」と理解してもらえれば幸いです。
今週の論文
今週の論文は「牛ふん堆肥または豚ぷん堆肥を連用する黄色土野菜畑における5年間の養分動態」です。5年間にわたり堆肥を施用し続けた場合、どのような効果があるか調べた論文になっています。背景には農地に過剰に投与された窒素やリン酸は川に流れ海へたどり着き富栄養化になり、赤潮を引き起こします。化学肥料ではなく、有機物である堆肥を施用した場合の養分動態を把握することを目的としています。
実験内容
牛ふん堆肥を施用する区、豚ぷん堆肥を施用する区、堆肥無施用区があり、堆肥はさらに標準区、半量区、1.5倍量区を設けた。すべての区で化学肥料は併用しており、窒素量が一定になるように調整されている。
半量区 半量区
牛ふん堆肥 標準区 豚ぷん堆肥 標準区
1.5倍量区 1.5倍量区
5年間、トウモロコシとキャベツを栽培し、土壌の化学性を調べた。
結果
1.CEC
※陽イオン交換容量で、肥料成分の保持できる能力の指標として使われている。高ければ高いほど保持能力が高い。
実験を始めた当初は14cmol/kgでしたが、堆肥無施用区では13.8cmol/kgと少し低下した。しかし堆肥連用した場合は維持あるいは向上し、牛ふん堆肥の1.5倍量区では17.7cmol/kg、豚ぷん堆肥の1.5倍量区は15.9cmol/kgまで向上した。
2.窒素肥沃土
※作物に欠かせない窒素がどれだけ土壌に含まれているか示されている。全窒素と可給態窒素があり、可給態窒素は植物が利用できる窒素であり、全窒素は植物が利用できかるかを問わず土壌に含まれている全ての窒素。
堆肥無施用区は全窒素と可給態窒素は減少する結果になった。堆肥を施用した場合すべての試験区で当初よりも全窒素、可給態窒素が向上し、1.5倍量、標準、1/2の順に多かった。
3.窒素溶脱量
※一部の窒素は水とともに移動する。例えば雨が降ると水が土壌から地下水へ、あるいは河川へ流れていく。それに伴って窒素も流出してしまう。溶脱はこの流出を示す。下の画像のような試験区(ライシメーター)を設け、溶脱量を測定している。
一年間の窒素溶脱量は堆肥無施用区で44.5g/㎡、牛ふん堆肥は40.5g-N/㎡、豚ぷん堆肥は47.6g-N/㎡という結果になった。
4.作物生産量
堆肥無施用区の作物生産量と比較して、堆肥を施用した場合ほとんどが増収となった。牛ふん堆肥の1.5倍量区は最大で1.3倍増、豚ぷん堆肥の1.5倍量区は最大で1.5倍増になった。
堆肥の良さはわかりましたか?
まず、堆肥を施用すると作物の収穫量が増大し、これだけでも堆肥のすばらしさを理解していただけると思います。この結果には窒素肥沃土が関係しており、特に土壌中の可給態窒素が豊富にある条件になったので作物の収量が増加したと考えられます。人間も食べる量が多くなると太って大きくなりますが、植物も同様に栄養が多ければ大きくなります。
さらにすごいことは堆肥を連用すると窒素肥沃土が徐々に高まっていくことです。堆肥無施用区の窒素肥沃土は減少していきましたが、堆肥を施用した場合では維持あるいは向上しています。雨によって流出しやすい可給態窒素を維持し続けるのはとても素晴らしいです。現在、肥料価格の高騰が続いていますので肥料を減らす減肥につながる事実はとても魅力的です。
CECの向上は非常に重要です。CECが低いとカルシウムやナトリウム、カリウムといった元素が流出しやすく、少量ずつ、回数を分けて施肥しなければいけません。しかし、CECが向上すれば施肥回数が減り作業性が向上するのはもちろん、流出しにくくなり、利用率が向上します。無駄な肥料を与えず済むので魅力的です。
堆肥はいいことばかりでしょうか?もちろん欠点はあり、代表的な欠点を2つ挙げます。手に入りやすい環境であるかと堆肥を撒くのに苦労する2点です。前者は農地の周囲に牧場が無いと手に入り辛く、手に入ったとしても価格が高いです。牛ふん堆肥が欲しくても近くには養鶏場しかないと、鶏糞堆肥を使わざるをえません。私は近くに牧場があり、牛ふん堆肥が手に入ります。武藤牧場さんありがとうございます!
後者の「堆肥を撒くのに苦労する」は特に面積が広いと顕著になります。一般的に10a(10m×100m)に堆肥は2t必要と言われています。野菜畑は対応できますが、水田を手広くやっている人は10a×100倍以上(1人当たり)の面積を栽培しています。堆肥を撒こうとすると200t必要になり、集めるのも大変ですが撒くのも大変です変です。。。
人力で堆肥を撒くのはどれだけ大変か、YouTubeでライブ配信するのでよかったら見てください。見て頂ければせめての救いになります(笑)チャンネルページ
——–参考文献——
糟谷真宏 荻野和明 廣戸誠一郎 石川博司 鈴木良地 2011:牛ふん堆肥または豚ぷん堆肥を連用する黄色土野菜畑における5年間の養分動態 愛知県農業総合試験場研究報告 43号