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【朗報】ナスの病害に苦しまなくて済む⁉炸裂するカラシナのパワー|特別栽培への道

カラシナって凄いかも。

まず、カラシナを知っていますでしょうか。漢字で書くと「辛子菜」で、下の写真のような容姿をしています。黄色い花を咲かせ、種は「和からし」や「マスタード」に利用される意外にも食卓に馴染みがある植物です(食用と緑肥用があるのでご注意を)。

カラシナを施用するとナスの半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)を抑制するかもっていう論文を紹介します。

 

半身萎凋病:ナスの半分が枯れる病気。次第に株全体へ広がっていく。

青枯れ病:ナスの株が青いまま萎れる。朝方は健全そうに見える株だが、気温が上がるにつれ萎れていく。これを何日も繰り返し枯れていく。枯れていく様子youtube

今回の論文

表題が「カラシナの前作とすき込みによるナス半身萎凋病の発病抑制」です。

はじめに

ナスの半身萎凋病は土壌伝染病害でナスに対して強い病原性を示します。この病害を抑制する手段の一つにくん煙剤を施用する方法がありますが、作業者の負担、環境への負荷がかかります。化学合成薬剤に頼らない防除手段が必要になりました。

カラシナを土壌へすき込むと様々な土壌病害を防ぐことが分かっている。

試験方法

Aの試験

病原菌を添加した土をポットに入れた。カラシナの種を播種→育ったカラシナを混ぜ込む→ナス苗を定植という順に行った。ナスの断面から発病株を特定した。

Bの試験

圃場での試験。カラシナ区、連作区、休作区の3つの試験区を設定した。

カラシナ区は11月に播種、3月に裁断した後すき込んだ試験区

連作区は2年連続でナスを栽培した試験区

休作区は1年目は栽培せず、2年目からナスを栽培した試験区

結果

Aの試験

カラシナをすき込んだ区と病原菌を添加しただけの区の発病頻度に有意な差があった年と無かった年があった。有意な差が無かった年を見たとき、カラシナ区は5/16が発病したのに対し、もう一つの区は11/16が発病した。約2倍の差が生じた。

Bの試験

連作区、休作区の発病株率は87%であったのに対し、カラシナ区は47%と低く抑えられた。

考察

カラシナはアブラナ科で、リグニンを含む。リグニンを土壌へ添加すると糸状菌が分解するためにリグナーゼを分泌し、これは同時にメラニンも分解する。メラニンは病原菌の微小菌核を構成する成分であり、リグナーゼがこれを分解したことで、病原菌のストレスに対する耐久性が減少し、菌密度が低下したと考えられた。

感想など

ラシナの栽培が半身萎凋病を抑制するのは非常に助かります。まず、カラシナの栽培時期が素晴らしいです。11月から3月とナスの7栽培時期と全くかぶっていないです。ナスは5月定植、10月まで収穫でき、カラシナ栽培はこの空き期間でできます。さらに、作業の手間がそんなにかからない点も素晴らしいです。種の播種はすぐに終わりますし、すき込みも畑を耕すと同時にできます。作業量が増えずに防除ができるため、普及されやすいと考えます。

が現在栽培している畑では青枯れ病が240株中20株以上が発病しました。収入は1割減です。青枯れ病にも同様の効果があると期待でき、すぐに導入したいです。

かし、1点問題があります。緑肥作物との兼ね合いです。栽培できる面積や時期は限られています。Nの供給も非常に大事ですが、病害に遭っては元も子もありません。どちらを取るか、別の場所で栽培した緑肥作物を持ってくるか、など考えなければなりません。

 

参考文献

池田健太郎 坂野真平 藤村真 2017:カラシナ前作とすき込みによるナス半身萎凋病の発病抑制 土と微生物 71-2