今回は有機物の堆肥についての知識を整理していきます。有機栽培の有機は有機物の有機で、主となる堆肥について知っておいて損はないと思います。
堆肥の製造
堆肥の主原料は家畜のフンで、鶏糞、豚糞、牛糞が使われることが多いです。そこにもみ殻や稲わらを加える場合があります。これらを家畜フン+もみ殻を定期的に空気を含ませるように攪拌させ、適切な水分量を保つことで堆肥になっていきます。この過程で家畜フンは温度がものすごく上昇し80℃に到達し、この温度上昇が非常に大事になってきます。
家畜フンと堆肥の違いとは?
家畜フンと堆肥はもう別物で、ブドウとワインぐらいの違いがあります。子どもも食べられるブドウが大人しか楽しめないアルコール入りのワインになるのと同じぐらいの違いが家畜フンと堆肥の関係性です。堆肥をC/N、微生物の2つの視点から家畜フンとの違いを述べていきます。
C/N(シーエヌ比)は物質に含まれている炭素と窒素の比を表しています。この比率が高いほど、つまり炭素が多く窒素が少ないと土壌に施用しても分解されにくく植物が利用できません。逆に窒素が多くC/Nが低くなると分解されやすく植物が利用しやすいです。目安として分解されにくいで有名な稲わらは30~です。
家畜フンのC/Nは35で分解されにくい稲わらと比べても分かるように家畜フンは非常に分解されにくい状態だと分かります。しかし堆肥にするとどうなるでしょうか。牛ふん堆肥は18前後、豚糞堆肥は15前後、鶏糞堆肥は11前後まで低下します。数字からも分かるように堆肥の方が分解され易く、植物が利用しやすいです。
次に微生物の違いを見ていきます。先述したように堆肥を作る際は温度が上昇します。80℃まで上昇するためほとんどの細菌類が死ぬため、病原菌による植物への病害リスクが大きく低下します。また80℃という温度は雑草の種子も殺すため、堆肥化した方が安心して使えます。
堆肥を使う目的
家畜フンと堆肥の違いは何となくでもわかっていただけたでしょうか。堆肥を使う主目的は土壌に栄養分を供給するためです。栄養という言い方は少し抽象的なのでハッキリ言いますと「N(窒素)を始めとしたP(リン)、K(カリウム)といった成分の供給」です。作物を栽培し収穫するとその土壌からはN、P、Kが系外へ流出します。収穫物であるナスにはタンパク質が含まれており、タンパク質にはNが含まれています。そもそもナスは植物細胞の集合体で、細胞膜にはPが欠かせません。我々がナスを収穫する=土壌からN・P・Kが流出、という等式が成り立ちます。土壌中にN・P・Kは無限にはなく、限られた分しか存在しないため収穫を続けると土壌はやせていきます。土壌へ補給する必要があり、それが化学肥料であったり堆肥であったりするわけです。
堆肥はN・P・Kの供給以外にも副次的な効果を発揮します。土壌の物理性を改善するのに役立ちます。物理性とは「水持ち」と表現される保水力、適切な空気量の通気性などを指し堆肥はこれらを改善します。堆肥を施用することで団粒構造を形成し適切な水分量を保つ「排水性と保水性が良い土壌」になります。また孔隙ができるため、通気性が良くなります。土壌は三相のバランスが重要と言われており、三相とは「土壌・水・空気」のバランスです。植物の根は呼吸しており酸素を必要としますが土壌と水の割合が多くなると呼吸できず根が腐ってしまいます。土壌の割合が少ないと根を張ることができず、水が無いと植物は育ちません。作物の生育のためには土壌のバランスが重要で、適切なバランスに保つための一助となるのが堆肥です。
堆肥は使えるなら使った方が良いよね、というのが今回の総括です。