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救世主になるか⁉緑肥作物について|特別栽培への道

緑肥作物について

緑肥作物は作物残渣を土壌へ鋤き込むことで土壌へ有機物を供給すると同時に物理性を改善、時には景観維持にプラスの効果を与えます。特にマメ科植物は土壌へ栄養を与える有効な作物で、それは空気中の窒素を同化できる根粒菌と共生できるからです。ほとんどの植物の窒素を得る手段は根から吸収する方法でそれ以外にはありません。マメ科植物は根粒菌と共生し根粒を形成し空気中の窒素を取り込み、植物体内へ窒素が保持されます。化学肥料を施用する目的の一つに窒素成分を供給があります。緑肥作物はその代替になり得るかもしれません。

 

紹介する論文

2008年の佐賀大学海浜台地生物環境研究センターより発行された論文です。

緑肥作物はヘアリーベッチと赤クローバーを栽培し、その後トウモロコシを栽培した実験です。

試験方法

供試作物:ヘアリーベッチ・赤クローバー トウモロコシ

播種日:2006/11/4 播種量:4kg 鋤き込み日:5/26

トウモロコシ播種:6/20

結果

赤クローバーは4月中旬に、ヘアリーベッチは5月上旬に開花した。窒素含有率は同程度だったが、乾物量は赤クローバーの方が1.5倍多かったため、窒素供給量も同様に1.5倍増えた(赤クローバー:18.5g/m2 ヘアリーベッチ12.5kg/m2)。

トウモロコシの茎葉部重は対象区で400g/m2で赤クローバー、ヘアリーベッチを鋤き込んだ試験区では650g/m2​と1.6倍になった。

穂重は対象区が200g/m2​で赤クローバー区で500g、ヘアリーベッチ区で550gとなった。

緑肥作物によって供給された窒素の30~50%がトウモロコシによって吸収された。

考察

ヘアリーベッチの窒素同化能力が高いとされてきたが赤クローバーはそれ以上の同化能力を有する。それは地上部乾物生成能力が高いからだと考えられた。

トウモロコシの穂重がヘアリーベッチで高くなったのは分解速度に違いがあり、赤クローバーよりもヘアリーベッチの方が早く分解した可能性がある。

 

この論文を受けて

素供給量を見ると赤クローバー:18.5g/m2 ヘアリーベッチ12.5g/m2​で、ナスの慣行栽培では窒素を44kg/10a施用します(岐阜県)。特別栽培の要件を満たすためには化学肥料を22kg/10aまで抑える必要があり、収量確保のために有機由来の窒素を22kg/10a以上必要です。

緑肥によって供給された窒素の30~50%が作物によって吸収されたため、有効窒素量は赤クローバーで9.3g/10a、ヘアリーベッチで6.3g/10aになります。緑肥作物を施用した場合、13~18kg/10aの有機由来の窒素を確保する必要があります。(それは別の回に)

クローバーは4月中旬に開花を迎えるため、生育が早いと考えられます。ナスは5月上旬に定植するため、生育の早い緑肥作物を選定する必要があります。

肥作物は最大、特別栽培の要件を満たすための40%の窒素成分を補ってくれます。特別栽培へ大きく前進できます。しかし、課題はあります。論文でも考察されてように分解速度の違いです。緑肥作物は有機体窒素から無機態窒素分解され、植物が利用できます。有機から無機へ分解されるためには土壌中の微生物の働きに依存します。分解速度が遅い微生物群集であった場合、肥効は発揮されづらいです。これらを加味した上でまず何の緑肥作物を栽培するか検討する必要があります。

 

——参考文献——-

鄭 紹輝 中元 博明 有馬 進(2010):ヘアリーベッチおよび赤クローバーによる土壌窒素の補給効果 Coastal Bioenvironment 12巻

岐阜県 特別農産物にかかわる表示ガイドラインの岐阜県の慣行レベル一覧https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/10965.pdf(2022/7/22確認)